ムーディ・ブルース『セヴンス・ソウジャーン』

ムーディ・ブルースの通算8枚目のアルバムは、『セヴンス・ソウジャーン(Seventh Sojourn)のタイトルが示す通り、『デイズ・オヴ・フューチュア・パスト』から数えて7枚目を意味する。あくまで『フューチュア・パスト』が一枚目だと言いたいらしい。「七度目…

ムーディ・ブルース『エヴリ・グッド・ボーイ・ディザーヴズ・フェイヴァ』

『ア・クエッション・オヴ・バランス』から一年ぶりのアルバム『エヴリ・グッド・ボーイ・ディザーヴズ・フェイヴァ』(1971年7月)は、日本において、もっともよく知られたムーディ・ブルースのアルバムとなった。実際、唯一のヒット・アルバムといってよい…

「密室講義」へと向かう三人の作家:カー、ロースン、乱歩

(『三つの棺』、『帽子から飛び出した死』の密室トリックを、はっきり明かしてはいませんが、かなりばらしています。それ以上に、『黄色い部屋の謎』、モーリス・ルブランの短篇小説のトリックを明らかにしていますので、くれぐれも、ご注意願います。) ジ…

ムーディ・ブルース『ア・クエッション・オヴ・バランス』

第二期ムーディ・ブルースの五枚目のアルバムは、前作から9カ月後の1970年8月にリリースされた。依然、ムーディーズのアルバム制作スピードは落ちていない。 しかし1970年代とともに、ムーディ・ブルースの音楽に大きな変化が生じたことは事実である。ヘイワ…

ムーディ・ブルース『トゥ・アワ・チルドレンズ・チルドレンズ・チルドレン』

第二期ムーディ・ブルースの四枚目のアルバム『トゥ・アワ・チルドレンズ・チルドレンズ・チルドレン』は、前作『オン・ザ・スレッショルド・オヴ・ア・ドリーム』からわずか7か月後に発売された。『デイズ・オヴ・フューチュア・パスト』以来のコンセプト・…

横溝正史『悪魔の手毬唄』

(本書のほか、『獄門島』、アガサ・クリスティおよび高木彬光の長編小説のアイディアを明かしています。) 『悪魔の手毬唄』は、横溝正史が自作のベストと考えていた長編小説だったようだ。 昭和37年の雑誌記事で「これが一番僕の作品では文章の嫌味もなく…

ムーディ・ブルース『オン・ザ・スレッショルド・オヴ・ア・ドリーム』

新生ムーディ・ブルースの三作目は、飛躍の一枚となった。全英アルバム・チャートで1位を獲得。『デイズ・オヴ・フューチュア・パスト』はやっと27位だったが、続く『イン・サーチ・オヴ・ザ・ロスト・コード』が5位とブレイクすると、『オン・ザ・スレッシ…

横溝正史『本陣殺人事件』

(本作品の犯人、トリックから動機まで、あらいざらいぶちまけています。) 『本陣殺人事件』については、すでに語り尽くされていて、もはや新たな論点は残されていないように思える。 しかし、その評価は、我が国のミステリ史に新たな時代を切り開いた長編…

ムーディ・ブルース『イン・サーチ・オヴ・ザ・ロスト・コード』

『失われたコードを求めて(イン・サーチ・オヴ・ザ・ロスト・コード)』は1968年7月にリリースされたムーディ・ブルースの通算3枚目の、メンバー交代後では2枚目のアルバムである。『デイズ・オヴ・フューチュア・パスト』からわずか8か月後というのが驚く…

ムーディ・ブルース『デイズ・オヴ・フューチュア・パスト』

ムーディ・ブルースは、プログレッシヴ・ロック(progressive rock)の先駆的バンドと位置付けられているが、本質的には、ビートルズを代表とする1960年代のブリティッシュ・ビート・バンドが発展的変化(progressive change)を遂げた事例である。 1964年のビー…

ニコラス・ブレイク『メリー・ウィドウの航海』

(本書のトリックおよび犯人のほかに、クリスティアナ・ブランドの『はなれわざ』、アガサ・クリスティの長編小説の真相を明かしています。) ニコラス・ブレイクの第十五長編『メリー・ウィドウの航海』(1959年)[i]は、これぞパズル・ミステリというべき…

ニコラス・ブレイク『血ぬられた報酬』

(本書のアイディアおよびプロットを明かしているほか、『野獣死すべし』について、ちょっとばらしています。) 『血ぬられた報酬』(1958年)[i]、タイトルはまるでハードボイルド・ミステリだが、前作の『章の終わり』(1957年)[ii]から一転して、再びサ…

ニコラス・ブレイク『章の終わり』

(本書のほか、『旅人の首』の内容に言及しています。) 出版社というのは、作家にとっては身近な存在であるはずなので、舞台にしやすいのだろうか(いや、むしろ、しにくいのか。本を出してもらっているわけだから)。ニコラス・ブレイクの1957年の長編『章…

エラリイ・クイーン『緋文字』

(本書の犯人・アイディア等のほかに、『Xの悲劇』、『シャム双子の謎』のダイイング・メッセージに言及しています。) 1950年代になって、エラリイ・クイーンのミステリは、また新たな段階へと入ったようだ。40年代はライツヴィル・シリーズをメインに据え…

ニコラス・ブレイク『闇のささやき』

(本書のアイディア、真相等に触れています。) 『闇のささやき』(1954年)[i]のタイトルは、例によって、ライオネル・ジョンソンという19世紀のイギリス詩人の引用のようだが、作品ジャンルとしては、『短刀を忍ばせ微笑む者』以来のスパイ・スリラーであ…

ニコラス・ブレイク『呪われた穴』

(本書の犯人について明言はしていませんが、かなり踏み込んでいますので、ご注意ください。) 『呪われた穴』(1953年)[i]は、ニコラス・ブレイクの第十長編で、お馴染みナイジェル・ストレンジウェイズが登場する。前作の『旅人の首』から四年後で、少々…

ニコラス・ブレイク『旅人の首』

(本書の犯人を明かしています。) 「復刊アンケート第9位」。私が持っているハヤカワ・ポケット・ミステリの『旅人の首』(2003年、原書刊行1949年)には、例のあのビニール・カヴァーの下に、こう謳い文句が載った帯が付いている。ハヤカワミステリの50周…

ニコラス・ブレイク『殺しにいたるメモ』

(本書の真相を明らかにしているほか、他のブレイク長編の犯人についても、注で言及しています。) 『殺しにいたるメモ』(1947年)[i]は、ニコラス・ブレイクの第八長編ミステリだが、前作の『雪だるまの殺人』(1941年)からは六年ぶりの発表である。 自伝…

エラリイ・クイーン『帝王死す』

(本書の犯人、トリックを明らかにしているうえに、「クリスマスと人形」、「七月の雪つぶて」の真相、他にアガサ・クリスティと横溝正史の作品のアイディアに言及しています。) 飛び切りの異色作、というのが『帝王死す』(1952年)[i]に与えられた一般的…

ジョン・ディクスン・カー『三つの棺』(その2)

(本書のトリックのほか、G・K・チェスタトン「マーン城の喪主」の内容に触れています。) 松田道弘は、ジョン・ディクスン・カーの『三つの棺』(1935年)[i]で作者がやりたかったことについて、次のように述べている。 「カーがやりたかったのは、この作品…

アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの回想』

(「最後の事件」のネタバレをしています-断る必要ないでしょうけれど。) 『シャーロック・ホームズの冒険』に続けて、『シャーロック・ホームズの回想』[i]を読み返してみた。こちらも数十年ぶりである。そしてやはり、大変楽しめた。 『冒険』は、1891年…

ニコラス・ブレイク『雪だるまの殺人』

(本書のほかに『死の殻』の真相に触れています。) ニコラス・ブレイクの第七長編『雪だるまの殺人』(1941年)[i]は、一見すると、前作『ワンダーランドの悪意』、前々作『短刀を忍ばせ微笑む者』と比べて、オーソドックスなパズル・ミステリに戻った感が…

ニコラス・ブレイク『ワンダーランドの悪意』

(本書の真相を明かしています。) ニコラス・ブレイクの第六長編は『ワンダーランドの悪意』(1940年)[i]、言うまでもなく『不思議の国のアリス』をもじっている[ii]のだが、「アリス(Alice)」と「悪意(malice)」をかけたのは、日本語訳ではわかりにくい。…

ニコラス・ブレイク『短刀を忍ばせ微笑む者』

(本書の真相と結末を明らかにしています。) ニコラス・ブレイクは、第五長編『短刀を忍ばせ微笑む者』(1939年)[i]で作風が大きく変わった。それまでの四作品は犯人当てのオーソドックスなミステリであったが、本作は何とスパイ・スリラーである。随分唐…

ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』

(本書のトリックおよび犯人のほか、アガサ・クリスティ、J・D・カーの長編小説のトリック・犯人に触れています。) 『野獣死すべし』(1938年)[i]は史上最高のパズル・ミステリだと、そう思っていた。 江戸川乱歩が、戦後まもない頃、「イギリス新本格派」…

ニコラス・ブレイク『ビール工場殺人事件』

(本書の犯人、トリック等のほか、注で横溝正史の短編小説のアイディアを明かしています。) ニコラス・ブレイクの第三作は、第一作の学園ミステリ、第二作の田園ミステリから一転して、ビール醸造工場内の殺人事件を扱っている[i]。おや、ブレイクが企業ミ…

ニコラス・ブレイク『死の殻』

(本書の真相、トリック等のほかに、注で、エラリイ・クイーンおよび横溝正史の長編小説に言及しています。) 処女作『証拠の問題』で学園ミステリに取り組んだブレイクの第二作『死の殻』[i]は、こちらもイギリス・ミステリ伝統のカントリー・ハウスものに…

横溝正史『扉の影の女』

(本編のほか、カーター・ディクスン『五つの箱の死』の犯人について言及しています。) 横溝正史の作品中、飛びきりの異色作といえば、まず本編が挙げられる。 その割には、従来、その異色ぶりというか、とんでもなさは、あまり論じられてこなかった。 どこ…

ニコラス・ブレイク『証拠の問題』

(本書の犯人およびトリックのほかに、G・K・チェスタトンの短編小説のトリックを明かしています。) ニコラス・ブレイクこと、セシル・デイ・ルイスは1904年にアイルランドに生まれた桂冠詩人で、俳優ダニエル・デイ・ルイスの父親としても知られている。と…

ビー・ジーズ・トリビュート・アルバム1996-1998

Soul of the Bee Gees (US, 1996) 01 Al Green, How Can You Mend A Broken Heart (1972) 02 Rufus featuring Chaka Khan, Jive Talkin’ (1975) 03 Candi Staton, Nights on Broadway (1977) 04 Portrait, How Deep Is Your Love (1995) 05 Dionne Warwick, …