ニコラス・ブレイク『雪だるまの殺人』

(本書のほかに『死の殻』の真相に触れています。) ニコラス・ブレイクの第七長編『雪だるまの殺人』(1941年)[i]は、一見すると、前作『ワンダーランドの悪意』、前々作『短刀を忍ばせ微笑む者』と比べて、オーソドックスなパズル・ミステリに戻った感が…

ニコラス・ブレイク『ワンダーランドの悪意』

(本書の真相を明かしています。) ニコラス・ブレイクの第六長編は『ワンダーランドの悪意』(1940年)[i]、言うまでもなく『不思議の国のアリス』をもじっている[ii]のだが、「アリス(Alice)」と「悪意(malice)」をかけたのは、日本語訳ではわかりにくい。…

ニコラス・ブレイク『短刀を忍ばせ微笑む者』

(本書の真相と結末を明らかにしています。) ニコラス・ブレイクは、第五長編『短刀を忍ばせ微笑む者』(1939年)[i]で作風が大きく変わった。それまでの四作品は犯人当てのオーソドックスなミステリであったが、本作は何とスパイ・スリラーである。随分唐…

ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』

(本書のトリックおよび犯人のほか、アガサ・クリスティ、J・D・カーの長編小説のトリック・犯人に触れています。) 『野獣死すべし』(1938年)[i]は史上最高のパズル・ミステリだと、そう思っていた。 江戸川乱歩が、戦後まもない頃、「イギリス新本格派」…

ニコラス・ブレイク『ビール工場殺人事件』

(本書の犯人、トリック等のほか、注で横溝正史の短編小説のアイディアを明かしています。) ニコラス・ブレイクの第三作は、第一作の学園ミステリ、第二作の田園ミステリから一転して、ビール醸造工場内の殺人事件を扱っている[i]。おや、ブレイクが企業ミ…

ニコラス・ブレイク『死の殻』

(本書の真相、トリック等のほかに、注で、エラリイ・クイーンおよび横溝正史の長編小説に言及しています。) 処女作『証拠の問題』で学園ミステリに取り組んだブレイクの第二作『死の殻』[i]は、こちらもイギリス・ミステリ伝統のカントリー・ハウスものに…

横溝正史『扉の影の女』

(本編のほか、カーター・ディクスン『五つの箱の死』の犯人について言及しています。) 横溝正史の作品中、飛びきりの異色作といえば、まず本編が挙げられる。 その割には、従来、その異色ぶりというか、とんでもなさは、あまり論じられてこなかった。 どこ…

ニコラス・ブレイク『証拠の問題』

(本書の犯人およびトリックのほかに、G・K・チェスタトンの短編小説のトリックを明かしています。) ニコラス・ブレイクこと、セシル・デイ・ルイスは1904年にアイルランドに生まれた桂冠詩人で、俳優ダニエル・デイ・ルイスの父親としても知られている。と…

ビー・ジーズ・トリビュート・アルバム1996-1998

Soul of the Bee Gees (US, 1996) 01 Al Green, How Can You Mend A Broken Heart (1972) 02 Rufus featuring Chaka Khan, Jive Talkin’ (1975) 03 Candi Staton, Nights on Broadway (1977) 04 Portrait, How Deep Is Your Love (1995) 05 Dionne Warwick, …

ジョン・ディクスン・カーと語りの詐術

(『夜歩く』、『五つの箱の死』、『テニスコートの殺人』、『九人と死で十人だ』、『殺人者と恐喝者』、『皇帝のかぎ煙草入れ』、『爬虫類館の殺人』、『囁く影』、『疑惑の影』、『墓場貸します』、『ビロードの悪魔』、『九つの答』、『ハイチムニー荘の…

エラリイ・クイーン「国名シリーズの犯人達」

(言うまでもないですが、国名シリーズ(およびドルリー・レーン・シリーズ)の犯人を明らかにしています。他に、G・K・チェスタトン、E・A・ポーの小説の内容に触れています。) エラリイ・クイーンの「国名シリーズ」は、1929年から1935年にかけて9作が書…

カーター・ディクスン『第三の銃弾』

(本書のトリック等のほかに、ヴァン・ダイン『グリーン家殺人事件』の犯人に言及しています。) 「第三の銃弾」は、ディクスン・カーの短編集に収録されている中編小説として親しまれてきた(そうでもないか)[i]が、実は単行本として出版されたものが原型[…

アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』

(『シャーロック・ホームズの冒険』を読んだことのない人が、こんな文章を読むわけがないと思いますが、何編か真相を明かしていますので、一応お断りしておきます。) 何十年ぶりかで『シャーロック・ホームズの冒険』を読んでみた。昔読んだのは創元推理文…

エラリイ・クイーン『靴に棲む老婆』

(本書の推理やトリック、犯人のほかに、注で『Yの悲劇』のアイディアに言及しています。) ライツヴィル・シリーズが書かれた1940年代のエラリイ・クイーンの諸作品のなかで、『靴に棲む老婆』(1943年)は、ひときわ異彩を放っている。 1942年の『災厄の町…

E・クイーン『十日間の不思議』から『ダブル・ダブル』へ

(『十日間の不思議』のトリックと『ダブル・ダブル』の犯人を明かしていますが、『十日間の不思議』の犯人と『ダブル・ダブル』のトリックには触れていません。) (追記。すいません。『十日間の不思議』の犯人にも触れていました。) 『ダブル・ダブル』…

横溝正史「車井戸はなぜ軋る」

(本作の真相、トリックのほか、高木彬光、中井英夫の作品の内容に言及しています。) 「車井戸はなぜ軋る」(1949年)[i]は、戦後、横溝正史が書いた中短編小説でベスト・ファイヴに入る傑作である、・・・などと仰々しく述べるまでもなく、恐らく、衆目の…

横溝正史『悪魔が来りて笛を吹く』

(本書のほか、J・D・カーの長編小説のトリックに言及しています。) 『悪魔が来りて笛を吹く』は、横溝正史が代表作と自負する長編である。1976年頃のエッセイで、自作のベストを選定するにあたって、田中潤司の選んだ5作(『獄門島』『本陣殺人事件』『犬…

ビー・ジーズ1966(2)

. この項目で取り上げているアルバムは、どちらも1966年に発売されたものではない。それなのに、なぜ、ここに置くかといえば、他に入れるところがないからである。 ビー・ジーズ『ターン・アラウンド・・・ルック・アット・アス』(Turn Around …Look at Us, …

ビー・ジーズ1966

S10 ビー・ジーズ「おうちがほしい」(1966.3) A 「おうちがほしい」(I Want Home, B. Gibb) 「おうちがほしい」って、幼稚園児のおままごとか。 このカプリングは、どちらがA面なのか、はっきりしないようだが、こちらの曲のほうがレコード番号が若いらしい…

ビー・ジーズ1965

S06 トレヴァー・ゴードンとビー・ジーズ「ハウス・ウィズアウト・ウィンドウズ」(1965.1) A 「ハウス・ウィズアウト・ウィンドウズ」(House without Windows, B. Gibb) 「君たちの書いた曲じゃヒットは無理だね」と言い渡されたものの、「でも、他の歌手の…

ビー・ジーズ1963-1964

ビー・ジーズの3人、バリー・ギブ(1946-)、双子のロビン・ギブ(1949-2012)とモーリス・ギブ(1949-2003)は、イギリスのアイリッシュ海に浮かぶマン島に生まれ、マンチェスターに移り住んだ後、1958年に家族とともにオーストラリアに移住するが、それ以前か…

ビー・ジーズ2001

『ディス・イズ・ホェア・アイ・ケイム・イン』は、通算20枚目(オーストラリア時代の3枚を除く)、21世紀になって最初の、そしてビー・ジーズにとって最後のオリジナル・アルバムとなった。 1967年の『ビー・ジーズ・ファースト』から実働35年。20枚という…

ビー・ジーズ・トリビュート・アルバム1993-1994

Bee Gees Songbook: The Gibb Brothers by Others (UK, 1993). 01 Adam Faith, Cowman Milk Your Cow (1967)(B. & R. Gibb). 02 Billy Fury, One Minute Woman (1968). 03 Nina Simone, I Can’t See Nobody (1969). 04 Jose Feliciano, First of May (1969).…

ビー・ジーズ1997

1997年は、ビー・ジーズにとっても、ファンにとっても、思い出深い年となった。 1月に「ジ・インターナショナル・アーティスト・アウォード」(アメリカ)、2月に「ザ・ブリティッシュ・フォノグラフィック・インダストリ・ライフタイム・アチーヴメント・ア…

ビー・ジーズ1993

ビー・ジーズ「ペイイング・ザ・プライス・オヴ・ラヴ」(Paying the Price of Love, 1993.8) 1 「ペイイング・ザ・プライス・オヴ・ラヴ」(B, R. & M. Gibb) アルバム参照。 2 「マイ・ディスティニー」(My Destiny, B, R. & M. Gibb) 1980年代以降、ビー・…

ビー・ジーズ1991

ビー・ジーズ「シークレット・ラヴ」(1991.3) A 「シークレット・ラヴ」(Secret Love) B 「トゥルー・コンフェッションズ」(True Confessions) アルバムを参照。 ビー・ジーズ『ハイ・シヴィライゼーション』(High Civilization, 1991.4). 1991年4月、1990年…

ビー・ジーズ1989

ビー・ジーズ『ONE』(Bee Gees, One, 1989.4) 『E・S・P』に続く二年ぶりのアルバム『ONE』は、アンディ・ギブの死によってもたらされた中断期間を挟んで1989年4月にイギリスで、7月にアメリカでリリースされた[i]。このアルバムから、CDでは恒例のボーナス…

ビー・ジーズ1988

1988年3月10日、アンディ・ギブ逝去。 この一事だけで、ビー・ジーズ・ファンにとって、この年は悲嘆にくれる年となってしまった。 思えば、アンディは30年前の1958年に生まれ、10年前の1978年3月11日には、「(ラヴ・イズ・)シッカー・ザン・ウォーター」…

ビー・ジーズ1987

1987年、ビー・ジーズは満を持して6年ぶりのアルバム『E・S・P』を発表した。 1986年10月にワーナー・ブラザースとレコード販売契約を結び、その第一弾だった。 しかし、満を持して、といっても、状況が整った、とは必ずしも言えなかった。ビッグ・アーティ…

ビー・ジーズ1985(2)

ロビン・ギブ「ライク・ア・フール」(1985.11) 1 「ライク・ア・フール」(Like A Fool, R, B. and M. Gibb) 2枚のソロ・アルバムの延長線上にある作品。しかし、本来のロビンらしい哀愁を帯びた歌声が戻ってきた感がある。彼らしい絶叫も一部聞かれる。 曲…