J・D・カー

J・D・カー『テニスコートの殺人』

『テニスコートの殺人』[i](1939年)は、『テニスコートの謎』[ii]として創元推理文庫に収録されていた長編小説の新訳版である。旧訳本は、1980年代にカーの翻訳をいくつも手掛けて、ファンを狂喜させた厚木 淳訳。新訳は、最近のカー作品の翻訳を和邇桃子…

J・D・カー『緑のカプセルの謎』

『緑のカプセルの謎』(1939年)は、ジョン・ディクスン・カーの作品中、比較的読まれてきた長編のひとつであろう。創元推理文庫で版を重ねてきて[i]、近年新訳も出た[ii]。創元社が、カーの改訳に熱を入れている恩恵を受けた格好である。 なぜ本作が版を重…

J・D・カー『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』

『エドマンド・ゴドフリー興殺害事件』(1936年)[i]が翻訳されたときは驚いた。2007年に創元推理文庫[ii]に収められた時には、もっと驚いた。絶対すぐに絶版になると思って、急いで書店に足を運んだ。 『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』は、ディクスン…

J・D・カー『死時計』

何かと言えばG・K・チェスタトンの影響が云々されるジョン・ディクスン・カーであるが、江戸川乱歩がその典型例として挙げたのが、『死者はよみがえる』(1938年)とこの『死時計』(1935年)である[i]。 カーの「チェスタトン流の味」が苦手だという二階堂…

カーター・ディクスン『読者よ、欺かるるなかれ』

『読者よ欺かるるなかれ』(1939年)は、カーター・ディクスン名義の異色長編である。といっても、カーには異色長編が多い。 例によって、カー作品ではおなじみの怪奇な謎が全編を覆っている。今回いささか異なるのは、SF的な超能力(テレフォース)による遠…

カーター・ディクスン『ユダの窓』

『虚無への供物』(1964年)で、日本ミステリ史上に名を残す中井英夫のエッセイに、『虚無』を書くきっかけとなったミステリについて語ったものがある。鎌倉まで所用があって、車中で時間をつぶすために分厚いミステリを貸本屋で借りた、という話である。読…

J・D・カー『帽子収集狂事件』(補遺)

ジョン・ディクスン・カーの長編を系統的に見ていくと、探偵の交代とともに、作風の変化が見て取れる。バンコラン・シリーズの4作品から、ロシターものの『毒のたわむれ』を経て、1933年の『魔女の隠れ家』でフェル博士のシリーズが始まる。バンコランの無国…

J・D・カー(カーター・ディクスン)『白い僧院の殺人』

『白い僧院の殺人』(1934年)は、カーター・ディクスン名義の第二長編で、ヘンリ・メリヴェル卿シリーズの第二作でもある。 かつては、『修道院殺人事件』の表題で、長谷川修二訳がハヤカワ・ポケット・ミステリに収録[i]され、『修道院の殺人』の書名で、…

J・D・カー『黒死荘の殺人』

『黒死荘の殺人』(1934年)は、カーター・ディクスン名義の第一長編で、いよいよヘンリ・メリヴェル卿が登場する。 本作は、1977年に平井呈一訳が講談社文庫[i]に収録され、同年、仁賀克維訳がハヤカワ・ミステリ文庫[ii]からも公刊されている。近年、創元…

J・D・カー『弓弦城の殺人』

『弓弦城殺人事件』(1933年)はカーター・ディクスン(正確にはカー・ディクスン)名義の最初の長編で、この一作のみの探偵ジョン・ゴーントが登場する。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1976年にハヤカワ・…

J・D・カー『魔女の隠れ家』

『魔女の隠れ家』(1933年)はディクスン・カーの長編第六作。いよいよギデオン・フェル博士が登場する。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1979年に創元推理文庫に収録される[i]と、1981年にはハヤカワ・ミス…

J・D・カー『毒のたわむれ』

『毒のたわむれ』(1932年)はディクスン・カーの第五長編で、パット・ロシターを主人公とした唯一の作品である。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1993年にハヤカワ・ポケット・ミステリで復刊され[i]、・・…

J・D・カー『蝋人形館の殺人』

『蠟人形館の殺人』(1932年)は実質的にアンリ・バンコランを主人公としたシリーズの掉尾を飾る長編である(1937年の『四つの凶器』では、バンコランの性格まですっかり変わってしまって、あえて同じ主人公と考える必要もない)。 例によって、本作も日本で…

カーター・ディクスン『五つの箱の死』

『五つの箱の死』(1938年)は、カーター・ディクスン名義の第九長編で、ヘンリ・メリヴェル卿シリーズの第八作である。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。1993年にハヤカワ・ポケット・ミステリで復刊され[i]、容易に入…

J・D・カー『髑髏城』

『髑髏城』(1931年)はアンリ・バンコランを主人公とした第三長編で、第一作のフランス、第二作のイギリスに続き、ドイツのライン渓谷を舞台としている。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、・・・いやそうでは…

J・D・カー『絞首台の謎』

『絞首台の謎』(1931年)はジョン・ディクスン・カーの長編第二作で、初めてイギリスを舞台にした作品である[i]。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1976年に創元推理文庫で刊行され、手軽に読めるようになっ…

『帽子収集狂事件』

(E・C・ベントリー、F・W・クロフツ、横溝正史、高木彬光の小説の内容に触れています。) 『帽子収集狂事件』(1933年)は、カーの代表作であり、出世作としても知られている。 ダグラス・G・グリーンの『ジョン・ディクスン・カー〈奇蹟を解く男〉』で…

『夜歩く』

(ヴァン・ダインの『カナリア殺人事件』、モーリス・ルブランの短編小説の内容に触れています。) 『夜歩く』(1930年)はジョン・ディクスン・カーの処女作である。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、クイーンやクリスティの処女作に比べると…

『爬虫類館の殺人』

『爬虫類館の殺人』(1944年)は、ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン)の中期の代表作のひとつに挙げられている。『連続殺人事件』(1941年)や『皇帝のかぎ煙草入れ』(1942年)などとともに、創元推理文庫で版を重ねたこともあり、カーの長…

『三つの棺』

(文中で、モーリス・ルブランの短編小説と鮎川哲也の長編小説の内容に触れています。) 『三つの棺』(1935年)は、ジョン・ディクスン・カーの代表作の一つとして知られている。そればかりではなく、密室小説としても専門作家による投票で一位になったこと…

『アラビアン・ナイトの殺人』

『アラビアンナイトの殺人』(1936年)は、ジョン・ディクスン・カーの長編のなかでは、あまり語られることのない作品である。ただし、「日本では」と断りを入れる必要がある。よく知られていることだが、ハワード・ヘイクラフトは、有名な『娯楽としての殺…