2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

横溝正史『不死蝶』

(本書のトリック等について言及しています。) 『不死蝶』[i]は、横溝正史の長編小説のなかでも、いろいろな意味で興味深い作品といえる。1953年に雑誌『平凡』に半年間連載され、1958年に長編化のうえ刊行されたが、『平凡』での連載というのがまず珍しい…

横溝正史『死神の矢』

(本書の犯人、トリック等のほか、『獄門島』、『犬神家の一族』、『白と黒』、『仮面舞踏会』、『悪霊島』の基本アイディアに触れていますので、ご注意ください。) 劇的で意表を突く場面から始まるのは娯楽小説なら普通のことで、作家が一番頭をひねるとこ…

横溝正史『悪霊島』

(本書の真相等を明かしています。あと『犬神家の一族』、『仮面舞踏会』についても、トリック等に触れていますので、ご注意ください。) 『悪霊島』は、言うまでもなく、横溝正史の遺作となった長編小説である。1979年から翌年にかけて連載され、1980年7月…

エラリイ・クイーン『盤面の敵』

(本書のほか、スティーヴンソン、ヘレン・ユースティス、ヘレン・マクロイ、ロバート・ブロックの長編小説のアイディアに触れています。) 1963年、『最後の一撃』(1958年)以来のエラリイ・クイーンの五年ぶりの長編ミステリが出版された。しかし、それは…

エラリイ・クイーン『最後の一撃』

(本書の手がかり、トリック等のほか、『アメリカ銃の謎』のトリック等を明かしています。) 1958年出版の本書[i]は、エラリイ・クイーンの30冊目の長編ミステリである。1929年の処女出版から丁度30年目で30冊。多作とはいえないが、順調な作家生活ではあっ…

横溝正史『毒の矢』

(本書の内容やトリックのほか、『神の矢』、「黒い翼」、『白と黒』などの長編短編小説、および、アガサ・クリスティの長編短編小説、ある古典的な密室ミステリのトリックに触れています。) 『毒の矢』(1956年)は、昭和30年代に横溝正史が力を入れた仕事…

ビー・ジーズ・トリビュート・アルバム2004

Maybe Someone Is Digging Underground: The Songs of the Bee Gees (Sanctuary Records, 2004) 2004年に久しぶりにリリースされたビー・ジーズのカヴァー曲集である。タイトルはもちろん「ニュー・ヨーク炭鉱の悲劇」の一節で、「(ビー・ジーズのカヴァー…