2022-01-01から1年間の記事一覧

ジョン・ディクスン・カーと語りの詐術

(『夜歩く』、『五つの箱の死』、『テニスコートの殺人』、『九人と死で十人だ』、『殺人者と恐喝者』、『皇帝のかぎ煙草入れ』、『爬虫類館の殺人』、『囁く影』、『疑惑の影』、『墓場貸します』、『ビロードの悪魔』、『九つの答』、『ハイチムニー荘の…

エラリイ・クイーン「国名シリーズの犯人達」

(言うまでもないですが、国名シリーズ(およびドルリー・レーン・シリーズ)の犯人を明らかにしています。他に、G・K・チェスタトン、E・A・ポーの小説の内容に触れています。) エラリイ・クイーンの「国名シリーズ」は、1929年から1935年にかけて9作が書…

カーター・ディクスン『第三の銃弾』

(本書のトリック等のほかに、ヴァン・ダイン『グリーン家殺人事件』の犯人に言及しています。) 「第三の銃弾」は、ディクスン・カーの短編集に収録されている中編小説として親しまれてきた(そうでもないか)[i]が、実は単行本として出版されたものが原型[…

アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』

(『シャーロック・ホームズの冒険』を読んだことのない人が、こんな文章を読むわけがないと思いますが、何編か真相を明かしていますので、一応お断りしておきます。) 何十年ぶりかで『シャーロック・ホームズの冒険』を読んでみた。昔読んだのは創元推理文…

エラリイ・クイーン『靴に棲む老婆』

(本書の推理やトリック、犯人のほかに、注で『Yの悲劇』のアイディアに言及しています。) ライツヴィル・シリーズが書かれた1940年代のエラリイ・クイーンの諸作品のなかで、『靴に棲む老婆』(1943年)は、ひときわ異彩を放っている。 1942年の『災厄の町…

E・クイーン『十日間の不思議』から『ダブル・ダブル』へ

(『十日間の不思議』のトリックと『ダブル・ダブル』の犯人を明かしていますが、『十日間の不思議』の犯人と『ダブル・ダブル』のトリックには触れていません。) (追記。すいません。『十日間の不思議』の犯人にも触れていました。) 『ダブル・ダブル』…

横溝正史「車井戸はなぜ軋る」

(本作の真相、トリックのほか、高木彬光、中井英夫の作品の内容に言及しています。) 「車井戸はなぜ軋る」(1949年)[i]は、戦後、横溝正史が書いた中短編小説でベスト・ファイヴに入る傑作である、・・・などと仰々しく述べるまでもなく、恐らく、衆目の…

横溝正史『悪魔が来りて笛を吹く』

(本書のほか、J・D・カーの長編小説のトリックに言及しています。) 『悪魔が来りて笛を吹く』は、横溝正史が代表作と自負する長編である。1976年頃のエッセイで、自作のベストを選定するにあたって、田中潤司の選んだ5作(『獄門島』『本陣殺人事件』『犬…

ビー・ジーズ1966(2)

. この項目で取り上げているアルバムは、どちらも1966年に発売されたものではない。それなのに、なぜ、ここに置くかといえば、他に入れるところがないからである。 ビー・ジーズ『ターン・アラウンド・・・ルック・アット・アス』(Turn Around …Look at Us, …

ビー・ジーズ1966

S10 ビー・ジーズ「おうちがほしい」(1966.3) A 「おうちがほしい」(I Want Home, B. Gibb) 「おうちがほしい」って、幼稚園児のおままごとか。 このカプリングは、どちらがA面なのか、はっきりしないようだが、こちらの曲のほうがレコード番号が若いらしい…

ビー・ジーズ1965

S06 トレヴァー・ゴードンとビー・ジーズ「ハウス・ウィズアウト・ウィンドウズ」(1965.1) A 「ハウス・ウィズアウト・ウィンドウズ」(House without Windows, B. Gibb) 「君たちの書いた曲じゃヒットは無理だね」と言い渡されたものの、「でも、他の歌手の…

ビー・ジーズ1963-1964

ビー・ジーズの3人、バリー・ギブ(1946-)、双子のロビン・ギブ(1949-2012)とモーリス・ギブ(1949-2003)は、イギリスのアイリッシュ海に浮かぶマン島に生まれ、マンチェスターに移り住んだ後、1958年に家族とともにオーストラリアに移住するが、それ以前か…

ビー・ジーズ2001

『ディス・イズ・ホェア・アイ・ケイム・イン』は、通算20枚目(オーストラリア時代の3枚を除く)、21世紀になって最初の、そしてビー・ジーズにとって最後のオリジナル・アルバムとなった。 1967年の『ビー・ジーズ・ファースト』から実働35年。20枚という…

ビー・ジーズ・トリビュート・アルバム1993-1994

Bee Gees Songbook: The Gibb Brothers by Others (UK, 1993). 01 Adam Faith, Cowman Milk Your Cow (1967)(B. & R. Gibb). 02 Billy Fury, One Minute Woman (1968). 03 Nina Simone, I Can’t See Nobody (1969). 04 Jose Feliciano, First of May (1969).…

ビー・ジーズ1997

1997年は、ビー・ジーズにとっても、ファンにとっても、思い出深い年となった。 1月に「ジ・インターナショナル・アーティスト・アウォード」(アメリカ)、2月に「ザ・ブリティッシュ・フォノグラフィック・インダストリ・ライフタイム・アチーヴメント・ア…

ビー・ジーズ1993

ビー・ジーズ「ペイイング・ザ・プライス・オヴ・ラヴ」(Paying the Price of Love, 1993.8) 1 「ペイイング・ザ・プライス・オヴ・ラヴ」(B, R. & M. Gibb) アルバム参照。 2 「マイ・ディスティニー」(My Destiny, B, R. & M. Gibb) 1980年代以降、ビー・…

ビー・ジーズ1991

ビー・ジーズ「シークレット・ラヴ」(1991.3) A 「シークレット・ラヴ」(Secret Love) B 「トゥルー・コンフェッションズ」(True Confessions) アルバムを参照。 ビー・ジーズ『ハイ・シヴィライゼーション』(High Civilization, 1991.4). 1991年4月、1990年…

ビー・ジーズ1989

ビー・ジーズ『ONE』(Bee Gees, One, 1989.4) 『E・S・P』に続く二年ぶりのアルバム『ONE』は、アンディ・ギブの死によってもたらされた中断期間を挟んで1989年4月にイギリスで、7月にアメリカでリリースされた[i]。このアルバムから、CDでは恒例のボーナス…

ビー・ジーズ1988

1988年3月10日、アンディ・ギブ逝去。 この一事だけで、ビー・ジーズ・ファンにとって、この年は悲嘆にくれる年となってしまった。 思えば、アンディは30年前の1958年に生まれ、10年前の1978年3月11日には、「(ラヴ・イズ・)シッカー・ザン・ウォーター」…

ビー・ジーズ1987

1987年、ビー・ジーズは満を持して6年ぶりのアルバム『E・S・P』を発表した。 1986年10月にワーナー・ブラザースとレコード販売契約を結び、その第一弾だった。 しかし、満を持して、といっても、状況が整った、とは必ずしも言えなかった。ビッグ・アーティ…

ビー・ジーズ1985(2)

ロビン・ギブ「ライク・ア・フール」(1985.11) 1 「ライク・ア・フール」(Like A Fool, R, B. and M. Gibb) 2枚のソロ・アルバムの延長線上にある作品。しかし、本来のロビンらしい哀愁を帯びた歌声が戻ってきた感がある。彼らしい絶叫も一部聞かれる。 曲…

ビー・ジーズ1985(1)

ダイアナ・ロス「イートゥン・アライヴ」(1985.9) 1 「イートゥン・アライヴ」(Eaten Alive, B. Gibb, M. Gibb and M. Jackson) バリーとモーリスにマイクル・ジャクソンが作曲に加わり、さらにプロデュースに参加するという、なんとも贅沢なシングルが出…

J・D・カー『血に飢えた悪鬼』

(本書の主題やトリック等を明かしています。) ジョン・ディクスン・カー最後の長編小説『血に飢えた悪鬼』は1972年に刊行された。ちょうど50年前のことだ。翻訳出版は1980年[i]。すでにカーは亡くなっていた。一年先輩のエラリイ・クイーンの最終作が1971…

J・D・カー『死の館の謎』

(犯人やトリックは一応伏せていますが、未読の方はご注意ください。それと、似たトリックを用いているカーの他の長編に注で触れています。) 『死の館の謎』(1971年)[i]は、ジョン・ディクスン・カーの70冊目か、そのあたりの作品となる。というより、最…

J・D・カー『亡霊たちの真昼』

(本書の犯人、トリックのほかに、『墓場貸します』およびエラリイ・クイーン『十日間の不思議』のトリックに触れています。) 「ニュー・オーリンズ三部作」の第二作である本書[i]は、翻訳されたのも二番目だったが、なんと、最終作の『死の館の謎』(1971…

J・D・カー『ヴードゥーの悪魔』

(本書の犯人およびトリックは明かしていませんが、ほのめかしてはいます。) 『ヴードゥーの悪魔』(1968年)は、2006年に翻訳出版された[i]。実に38年かかっている。しかし、『エドマンド・ゴッドフリー卿殺害事件』(1936年)に至っては55年かかっている…

J・D・カー『月明かりの闇』

(本書の犯人、トリック等について言及しています。) 2000年に翻訳出版された『月明かりの闇-フェル博士最後の事件-』(1967年)[i]は、副題どおり、フェル博士シリーズの最後の長編である。しかし、別に原題に「最後の事件」と謳っているわけではないの…

J・D・カー『仮面劇場の殺人』

(本書のトリック等のほか、G・K・チェスタトンの短編小説、E・クイーンの長編小説、横溝正史の長編小説の内容を明かしています。) 1966年、ディクスン・カーは前年に引き続いてフェル博士を主役とした長編ミステリを発表した。『仮面劇場の殺人』[i]は、カ…

J・D・カー『悪魔のひじの家』

(本書の犯人、トリックのほか、『孔雀の羽根』、『第三の銃弾』の内容に言及しています。) 1965年、ディクスン・カーは、突然、五年ぶりにフェル博士が登場するミステリ長編を発表した。それが『悪魔のひじの家』(1965年)である。しかし、翻訳が出たのは…

J・D・カー『深夜の密使』

(本書の犯人やアイディアを明かしていますが、わかっていても、あまり差支えはないと思われます。) 1962年に『ロンドン橋が落ちる』を発表した翌年、ディクスン・カーは脳卒中の発作で倒れ、療養を余儀なくされた[i]。このことは当時の日本で紹介されたの…