2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ニコラス・ブレイク『秘められた傷』

(本書の犯人を明かしてはいませんが、内容や構成には立ち入っていますので、ご注意ください。) 『秘められた傷』[i]は、ニコラス・ブレイクの第二十作目、最後の長編小説である。 今回ブレイクを順番に読み直そうと思った動機のひとつは、本書を再読したい…

ニコラス・ブレイク『死の翌朝』

(本書のほかに、『死のとがめ』、『死のジョーカー』の真相を明かしています。他のブレイク作品の内容にも、おまけにエラリイ・クイーンの中編小説、J・D・カーとE・D・ビガーズの長編小説にも言及しているので、ご注意ください。) 2014年に刊行された本書…

ニコラス・ブレイク『悪の断面』

(本書の内容をほぼ明かしていますので、ご注意ください。) 原題のThe Sad Varietyは、例によって文学作品からの引用かと思ったが、訳者解説でも何も説明がないので、違うようだ。「嘆かわしい見解の不一致」とは、要するに東西冷戦の西側と東側のイデオロ…

エラリイ・クイーンのハリウッド三部作:『悪魔の報酬(悪魔の報復)』、『ハートの4』、『ドラゴンの歯』

(『悪魔の報酬(悪魔の報復)』、『ハートの4』、『ドラゴンの歯』のトリック等を明かしていますので、ご注意ください。) 『悪魔の報酬』 1930年代末に書かれたエラリイ・クイーンの三冊の長編ミステリは、ハリウッドものとして知られている。そして、ク…

ニコラス・ブレイク『死のジョーカー』

(犯人の名前は伏せていますが、ほぼばらしていますので、ご注意ください。) 『死のジョーカー』(1963年)[i]は、ニコラス・ブレイクの第17長編だが、前作『死のとがめ』(1961年)[ii]と同様の犯人当てミステリである。つまり、それ以前の『血ぬられた報…