江戸川乱歩

江戸川乱歩「D坂の殺人事件」と「心理試験」

(二作品のほか、「二銭銅貨」、「恐るべき錯誤」、「二廃人」などの短編の構想に関して言及していますので、未読の方は、ご注意ください。) 「D坂の殺人事件」と「心理試験」は、「二銭銅貨」で鮮烈なデビューを飾った江戸川乱歩が、満を持して世に問うた…

江戸川乱歩「二銭銅貨」と「一枚の切符」

(「二銭銅貨」、「一枚の切符」の結末のほか、「赤い部屋」、「陰獣」の結末についても触れていますので、ご注意ください。) 我が国の最初の探偵小説として挙げられることも多い「二銭銅貨」だが、無論、本作が日本初の創作探偵小説と言うわけではない。作…

江戸川乱歩『大暗室』

(本書の内容を詳しく紹介していますので、未読の方はご注意ください。) 最初、本書を手に取ったとき、その題名に、まず、しびれた。なにしろ、「暗室」(写真部か)に「大」をつけただけで、これほど怪しい魅力に富んだタイトルにしてしまうのである。何か…

江戸川乱歩『黒蜥蜴』

(本書のトリック等を紹介していますので、未読の方はご注意ください。) 戦前の江戸川乱歩は、次々にヒット作を生み出す大衆文学界の巨星だったから、代表作には事欠かない。『蜘蛛男』(1929-1930年)や『黄金仮面』(1930-1931年)などと並び、本書もその…

江戸川乱歩『一寸法師』

(本書の構成、トリック等のほかに、エラリイ・クイーン、ジョン・ディクスン・カーの代表作について触れているので、ご注意願います。) 江戸川乱歩の処女長編小説というと、『闇に蠢く』(1926年)ということになっている。しかし、この作品は雑誌『苦楽』…

江戸川乱歩『闇に蠢く』

(本書の内容、結末を明かしています。) 江戸川乱歩の初の連載長篇が本書『闇に蠢く』である。 雑誌『苦楽』に1926年1月から11月にかけて連載されたのだが、前年に「人間椅子」が掲載されて大評判となり、それを受けて、新たに長編依頼があったらしい[i]。…

江戸川乱歩「恐怖王」

(本書の犯人、トリック等を明かしていますので、未読の方はご注意ください。) 江戸川乱歩の長編小説のタイトルは、作品数が増えるとともに、いよいよ大げさに、ますます投げやりになっていった。「恐怖王」というのも、すごい題名である。「キング・オヴ・…

江戸川乱歩「湖畔亭事件」

(本書の真相のほか、「二銭銅貨」、「一枚の切符」、「恐るべき錯誤」、「赤い部屋」、「盗難」、「人間椅子」、「接吻」、「陰獣」などの結末に言及していますので、ご注意願います。) 「湖畔亭事件」は、週刊誌『サンデー毎日』に1926年1月から3月にかけ…

江戸川乱歩『妖虫』

(本書のほか、『蜘蛛男』の犯人について触れています。また、横溝正史の某短編小説についても同様ですので、ご注意ください。) 昭和8年12月から翌年11月まで『キング』誌上で連載された『妖虫』(1933-34年)は、第二回目の(に、二回目!?)休筆期間を経…

江戸川乱歩『猟奇の果』

(本作の内容について詳しく触れていますので、未読の方は、ご注意ください。) 『猟奇の果』といえば、大内茂男が江戸川乱歩長編小説論「華麗なユートピア」において、「乱歩の長編諸作中でも、最大の珍作である」[i]と評したように、短編小説に比べ評価の…

江戸川乱歩「パノラマ島奇談」

(本作品のほか、江戸川乱歩の短編小説数編について、内容に立ち入っています。) 江戸川乱歩の連載小説といえば、「陰獣」と「パノラマ島奇談」が双璧ということになるだろう。 いずれも文庫本で100頁を少し越えるくらいの長さで、現代の標準でいえば、どち…

江戸川乱歩「陰獣」

(「陰獣」の犯人等のほかに、エラリイ・クイーンの『十日間の不思議』のプロットを紹介していますので、未読の方はご注意ください。) 「陰獣」[i]は、言うまでもなく江戸川乱歩全作品中、もっともセンセーションを巻き起こした探偵小説である。 『探偵小説…

江戸川乱歩『黄金仮面』

(本書の内容等を、詳しく紹介しています。) 『黄金仮面』は、雑誌『キング』に1930年から翌年にかけて連載された、江戸川乱歩最大のヒット作のひとつである。大内茂男によっても「大衆小説界に乱歩の人気を不動のものたらしめた快作」[i]と評価されている…

江戸川乱歩『吸血鬼』

(本書の犯人等の内容を明かしていますので、ご注意ください。) 江戸川乱歩の『吸血鬼』(1930-31年)には、吸血鬼は出てこない。九割方読み終わった(言うまでもないが、再読)あたりで、ふと思ったのが、何でこの小説は「吸血鬼」という題名だったのだろ…

江戸川乱歩『魔術師』

(本書の犯人・トリックのほか、『孤島の鬼』のトリック等に触れています。) 『魔術師』(1930-31年)は、『蜘蛛男』(1929-30年)に続いて『講談倶楽部』に連載された長編ミステリである。連載が開始された1930年は、ジョン・ディクスン・カーが『夜歩く』…

江戸川乱歩『蜘蛛男』

(本書の犯人のほか、モーリス・ルブランの『813』、E・フィルポッツの『赤毛のレドメイン家』の内容を部分的に明らかにしています。) 久しぶりに『蜘蛛男』(1929-30年)を読んだ。創元推理文庫から出た、連載時の挿絵入りの本[i]で、買ったものの、そ…

江戸川乱歩『孤島の鬼』

(本書との比較で、エラリイ・クイーンの代表作に言及しています。犯人は明かしていませんが、ご注意ください。) 大学に入学した年だったと思うが、図書館に行くと講談社版の江戸川乱歩全集[i]を見つけた。「少年探偵団」のシリーズは、全部ではないが[ii]…