2021-01-01から1年間の記事一覧

ビー・ジーズ1972

「マイ・ワールド」(1972.1) 1 「マイ・ワールド」(My World, B. & R. Gibb) ビー・ジーズのシングル・レコードは、「トゥ・ラヴ・サムバディ」が典型のように、メロディアスなイントロが特徴であることが多いが、「マイ・ワールド」はまるでリハーサルの音…

ビー・ジーズ1971(2)

『トラファルガー』(Trafalgar, 1971.11) 『トラファルガー』は1970年代前半のビー・ジーズのアルバムのなかでベストの作品であるという評価に多くのファンが同意することと思う。バリーとロビンの黄金ライター・コンビが復活することで、前作よりもはるかに…

ビー・ジーズ1971(1)

「傷心の日々」(1971.5) 1 「傷心の日々」(How Can You Mend A Broken Heart, B. & R. Gibb) 「ロンリー・デイズ」から半年後に発表された、リユニオン後の2枚目のシングル。なぜこんなに間があいたのか不思議だが、モーリスのコメントによると、「ロンリー…

ビー・ジーズ1970(3)

「ロンリー・デイ」(1970.11) 1 「ロンリー・デイ」(Lonely Days) 1970年8月に、ギブ兄弟3人での活動再開をメディアに宣言した後、最初に発表されたシングル。イギリスでは、脱退騒動の悪印象が影響してか、最高位33位と不評。ドイツでも思ったほど伸びず25…

ビー・ジーズ1970(2)

「アイ・オー・アイ・オー」(1970.3) 1 「アイ・オー・アイ・オー」(I. O. I. O.) ビー・ジーズの7か月ぶりのシングルが出たとき、すでにグループは消滅し、コリン・ピーターセンは解雇され、バリーとモーリスはソロ・レコーディングに取り掛かっていた。も…

ビー・ジーズ1970(1)

ロビン・ギブ「夏と秋の間に」(1970.1) 1 「夏と秋の間に」(August October) ロビン・ギブの第三弾シングルは、前作から間を置かずに1970年早々に発売された。 前作の「ミリオン・イヤーズ」があまりに重々しいバラードだったことを反省してか、こちらはもう…

カーター・ディクスン『読者よ、欺かるるなかれ』

『読者よ欺かるるなかれ』(1939年)は、カーター・ディクスン名義の異色長編である。といっても、カーには異色長編が多い。 例によって、カー作品ではおなじみの怪奇な謎が全編を覆っている。今回いささか異なるのは、SF的な超能力(テレフォース)による遠…

カーター・ディクスン『ユダの窓』

『虚無への供物』(1964年)で、日本ミステリ史上に名を残す中井英夫のエッセイに、『虚無』を書くきっかけとなったミステリについて語ったものがある。鎌倉まで所用があって、車中で時間をつぶすために分厚いミステリを貸本屋で借りた、という話である。読…

J・D・カー『帽子収集狂事件』(補遺)

ジョン・ディクスン・カーの長編を系統的に見ていくと、探偵の交代とともに、作風の変化が見て取れる。バンコラン・シリーズの4作品から、ロシターものの『毒のたわむれ』を経て、1933年の『魔女の隠れ家』でフェル博士のシリーズが始まる。バンコランの無国…

J・D・カー(カーター・ディクスン)『白い僧院の殺人』

『白い僧院の殺人』(1934年)は、カーター・ディクスン名義の第二長編で、ヘンリ・メリヴェル卿シリーズの第二作でもある。 かつては、『修道院殺人事件』の表題で、長谷川修二訳がハヤカワ・ポケット・ミステリに収録[i]され、『修道院の殺人』の書名で、…

J・D・カー『黒死荘の殺人』

『黒死荘の殺人』(1934年)は、カーター・ディクスン名義の第一長編で、いよいよヘンリ・メリヴェル卿が登場する。 本作は、1977年に平井呈一訳が講談社文庫[i]に収録され、同年、仁賀克維訳がハヤカワ・ミステリ文庫[ii]からも公刊されている。近年、創元…

J・D・カー『弓弦城の殺人』

『弓弦城殺人事件』(1933年)はカーター・ディクスン(正確にはカー・ディクスン)名義の最初の長編で、この一作のみの探偵ジョン・ゴーントが登場する。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1976年にハヤカワ・…

J・D・カー『魔女の隠れ家』

『魔女の隠れ家』(1933年)はディクスン・カーの長編第六作。いよいよギデオン・フェル博士が登場する。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1979年に創元推理文庫に収録される[i]と、1981年にはハヤカワ・ミス…

J・D・カー『毒のたわむれ』

『毒のたわむれ』(1932年)はディクスン・カーの第五長編で、パット・ロシターを主人公とした唯一の作品である。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1993年にハヤカワ・ポケット・ミステリで復刊され[i]、・・…

カーター・ディクスン『五つの箱の死』

『五つの箱の死』(1938年)は、カーター・ディクスン名義の第九長編で、ヘンリ・メリヴェル卿シリーズの第八作である。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。1993年にハヤカワ・ポケット・ミステリで復刊され[i]、容易に入…

J・D・カー『蝋人形館の殺人』

『蠟人形館の殺人』(1932年)は実質的にアンリ・バンコランを主人公としたシリーズの掉尾を飾る長編である(1937年の『四つの凶器』では、バンコランの性格まですっかり変わってしまって、あえて同じ主人公と考える必要もない)。 例によって、本作も日本で…

J・D・カー『蝋人形館の殺人』

『蠟人形館の殺人』(1932年)は実質的にアンリ・バンコランを主人公としたシリーズの掉尾を飾る長編である(1937年の『四つの凶器』では、バンコランの性格まですっかり変わってしまって、あえて同じ主人公と考える必要もない)。 例によって、本作も日本で…

J・D・カー『髑髏城』

『髑髏城』(1931年)はアンリ・バンコランを主人公とした第三長編で、第一作のフランス、第二作のイギリスに続き、ドイツのライン渓谷を舞台としている。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、・・・いやそうでは…

J・D・カー『絞首台の謎』

『絞首台の謎』(1931年)はジョン・ディクスン・カーの長編第二作で、初めてイギリスを舞台にした作品である[i]。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1976年に創元推理文庫で刊行され、手軽に読めるようになっ…

Bee Gees 1969(番外編)

マーブルズ「君を求める淋しき心」(The Marbles, The Walls Fell Down, 1969.3) 1 「君を求める淋しき心」(The Walls Fell Down, B, R. and M. Gibb) 「オンリー・ワン・ウーマン」の成功に味をしめたのか、マーブルズの第二弾は、明らかに前作の二番煎じだ…

Bee Gees 1969(3)

12 「思い出を胸に」(1969.8) 1 「思い出を胸に」(Don‘t Forget to Remember) “Forget”と”Remember”という反意語をタイトルに織り込んだのは面白い。「覚えていることを忘れないで」、とは回りくどいが、十代の頃からいやというほど曲を書いてきたせいか、…

Bee Gees 1969(2)

11 「トゥモロウ・トゥモロウ」(1969.5) 1 「トゥモロウ・トゥモロウ」(Tomorrow, Tomorrow) ロビンの脱退から、わずか2か月後に発売されたイギリスで9枚目のシングル。3月にはすでにレコーディングされていたらしい[i]。 もともとジョー・コッカーのために…

Bee Gees 1969(1)

10 「若葉のころ」(1969.2) 1 「若葉のころ」(First of May)① このシングルの日本盤ジャケットは、ヨーロッパ中世の宮廷画のようなイラストに、バックは空の青。一見したところでは、ポップ・ロック・グループのレコードとは思えないような優雅なデザインだ…

Bee Gees 1968(4)

〔3〕『アイディア』(Idea, 1968.8) 『ホリゾンタル』から半年という早いペースで3枚目のアルバムがリリースされた。この時期は曲のタイトルもそうだが、アルバムも単語ひとつのタイトルが、次の『オデッサ』まで続く。全12曲、前述のように、後にシングル…

Bee Gees 1968(3)

7 「ジャンボー」(1968.3) 1「ジャンボー」(Jumbo) 全米では57位に終わり、「ニュー・ヨーク炭鉱の悲劇」から続けてきたトップ20入りを逃した。全英では25位で、「トゥ・ラヴ・サムバディ」の41位は上回ったが、「マサチューセッツ」以来の連続トップ10入…

Bee Gees 1968(2)

〔2〕『ホリゾンタル』(Horizontal, 1968.2) 黄緑色のジャケットの中央が楕円形に切り抜かれて、そのなかにメンバー5人の写真が埋め込まれている。鏡を模したデザインなのだろう。それが、アメリカ盤では、デザインは同じでも、鏡のなかの5人の姿が逆に映っ…

Bee Gees 1968(1)

6 「ワーズ」(1968.1) 1 「ワーズ」(Words) 1968年最初のレコードは、前作と間違えそうなタイトルの「ワーズ」だった。 「ワーズ」は「トゥ・ラヴ・サムバディ」と並ぶビー・ジーズ初期の代表作とされ、現在の評価は「マサチューセッツ」をもしのぐほどだが…

Bee Gees 1967(3)

3⃣「マサチューセッツ」(1967.9) 1 「マサチューセッツ」(Massachusetts) ボストンは知っていても、ボストンを州都とするマサチューセッツの名を知っている日本人は少ないだろう。もっとも作者のギブ兄弟も知らなかったらしい[i]。17世紀の魔女裁判事件で知…

Bee Gees 1967(2)

〔1〕『ビー・ジーズ・ファースト』(Bee Gees 1st, 1967.7) 1967年は、ジミ・ヘンドリックスやドアーズがデビューした年であり、クリームが人気を確立した年でもある。翌1968年になると、上記の三大グループがアルバム・チャートの1位を獲得して、全米アルバ…

Bee Gees 1967(1)

1⃣「ニューヨーク炭鉱の悲劇」(1967.4) 1 「ニューヨーク炭鉱の悲劇」(New York Mining Disaster 1941) ビー・ジーズの英米初登場曲[i]は全英12位、全米14位。とくに米ビルボード誌の14位は新人グループとしては上々と言えるが、全米での鳴り物入りのデビュ…