2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

狐を嗅ぎ出せ-『フォックス家の殺人』

『フォックス家の殺人』(1945年)は、『災厄の町』とともに、第二次大戦後のエラリイ・クイーンを代表する長編と見られてきた・・・日本では。 戦後間もない随筆で、江戸川乱歩は、これら二編を取り上げて、クイーンの作風の変化の大きさに触れながら、『フ…

横溝正史『獄門島』

(本書のほかに、アガサ・クリスティの長編小説の犯人やトリックに言及しています。) 『獄門島』(1947-48年)は、日本ミステリ史上、圧倒的な傑作として君臨し続けている。 知名度なら『犬神家の一族』(1950-51年)か『八つ墓村』(1949-51年)だろうが、…

横溝正史「百日紅の下にて」

(本作のアイディア等に触れています。) 「百日紅の下にて」(1951年)は、横溝正史の敗戦後に書かれた傑作短編ミステリである。戦後中短編に限れば、ベスト・ファイヴに入るだろう。他の四作品は、「探偵小説」、「黒猫亭事件」・・・、残りは、適当に選ん…

J・D・カー『九つの答』

(犯人その他を明かしています。) 『九つの答』[i](1952年)は、ディクスン・カーの最大長編のひとつである。原書がないので、翻訳で比較するだけだが、『アラビアン・ナイトの殺人』(1936年)より長いし、前年の大長編『ビロードの悪魔』[ii](1951年)…

J・D・カー『ビロードの悪魔』

(本書のほかに、アガサ・クリスティの『アクロイド殺害事件』、ヘレン・マクロイの『殺す者と殺される者』、エラリイ・クイーンの『盤面の敵』の真相に触れています。) 1950年から始まったディクスン・カーの歴史ミステリのシリーズは、新世代のカー評価の…

J・D・カー『ニューゲイトの花嫁』

(犯人その他に触れています。) 1950年、いよいよディクスン・カーの歴史ミステリが始まる。1934年にはRoger Fairbairn名義の歴史ロマンスDevil Kinsmere があり、1936年にはノン・フィクション『エドマンド・ゴッドフリー卿殺人事件』の出版があったが、謎…

J・D・カー『疑惑の影』

(本書の内容のほか、フランシス・アイルズの『殺意』の結末に触れています。) 『疑惑の影』(1949年)は初読の時、かなり感心した記憶がある。ところが、再読したら、そうでもなかった。 犯人やトリックを知っているから、というわけでもなく、無実のヒロ…

J・D・カー『囁く影』

(本書の犯人、トリック等のほか、モーリス・ルブランの短編、横溝正史の『夜歩く』、「悪魔の降誕祭」のトリックに触れています。) 『囁く影』(1946年)[i]は、ジョン・ディクスン・カーの戦後第一作ということになる。冒頭には、第二次大戦直後のロンド…

カーター・ディクスン『墓場貸します』

(本書のほか、『青銅ランプの呪』、ガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』、マージェリー・アリンガムの長編小説のトリックに言及しています。) 題名からして、どこかユーモラスだが、内容も、のっけからヘンリ・メリヴェル卿が演じるニュー・ヨーク地下鉄…

カーター・ディクスン『青銅ランプの呪』

(本書のほか、ガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』、エラリイ・クイーンの「ショート氏とロング氏の冒険」、カーの『火刑法廷』、カーおよびエイドリアン・ドイルの「ハイゲイトの奇蹟事件」のトリックに触れています。) 『青銅ランプの呪』(1945年)で…