Maybe Someone Is Digging Underground: The Songs of the Bee Gees (Sanctuary Records, 2004)
2004年に久しぶりにリリースされたビー・ジーズのカヴァー曲集である。タイトルはもちろん「ニュー・ヨーク炭鉱の悲劇」の一節で、「(ビー・ジーズのカヴァー曲を)発掘してみました」ということなのだろう。
「カウマン・ミルク・ユア・カウ」のようなすでにCD化済みの曲も含まれているが、確かになかなか掘り出し物が入っていて、モーリスの未発表曲まで、こっそり含まれているのには興奮した。
実は、ビー・ジーズのトリビュート・アルバムで、私が一番愛聴してきたのが本CDである。オーストラリア時代の楽曲カヴァーも、おなじみのヒット曲のそれも、そしてそれまで聞いたことのなかったギブ兄弟の曲もあって、聞き飽きなかった。ほぼすべて1960年代の楽曲かそのカヴァーであるのも、ひときわ懐かしい。
解説も詳しいし、何より収録されたヴァージョンに素晴らしいものが多い。古株のファンなら、きっと満足できたはずである。
01 Spicks and Specks, The Status Quo
有名バンドのステイタス・クウォーによるカヴァー。当然ワイルドなロック・ヴァージョンだが、サーチャーズ[i]に比べると幾分丁寧な印象なのは、歌い方のせいか(サーチャーズのラフな感じも悪くないですが)。
しかし、こうしてロック・バンドのカヴァーを聞いて思うのは、オリジナルが意外にロックしていることで、金のかかってなさそうなチープなバックのサウンドとバリーの遠慮を知らないパワフルなヴォーカルが相まって、一番荒くれているかも。
02 Top Hat, The Montanas
ここからの4曲は、未発表曲集『ノスタルジア』(1970年)[ii]からのセレクト。
「トップ・ハット」は、コミカルなポップ・ソングだが、ショッピングに出かけたバリーが帽子を選びながら鼻歌で作ったに違いない。
1967年にシングルB面で発表されたそうだが、あまり特徴のないカヴァーで、穴埋め用のレコーディングに聞こえてしまうのも仕方ないか。
03 Butterfly, The Marmalade
マーマレイドによる素晴らしいカヴァー・ヴァージョン。「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」のナンバー・ワンを始めとして、1960年代のヒット・メイカーだったグループだが、どうもレコード会社をデッカに変わったあとに、元所属のCBSから発売されたらしい[iii]。
全然ヒットしなかったのは、そのせいだと信じたいくらい素敵な出来で、ビー・ジーズのオリジナルに欠けていた華麗なストリングスのアレンジと、オリジナルを超える豊かなコーラスで原曲の魅力を倍加させている。「バタフライ」の決定版といえば、これだろう。最近のカヴァー集にも収録されたので[iv]、手に入れやすくなった。
04 The Storm, Family Dogg
“A Way of Life”(1969年)という全英トップ・テン・ヒットをもつグループ(アルバート・ハモンドが所属していたらしい)によるカヴァー。解説パンフレットの写真を見ると、男三人と女二人からなるが、女性陣が、いかにも60年代のロンドンっ子といったメーキャップなのに対し、男性陣は、トム・ジョーンズみたいなダンディやシルクハットに黒眼鏡の怪しい詐欺師みたいなメンバーがいたりして、なんだかよくわからない。
「ザ・ストーム」(1967年)は、シンプルなオリジナルに比べて、蝶が舞うような(って、バタフライは前の曲か)華麗なコーラス・ワークで各段に優れた出来栄え。こちらもヒットはしなかったらしいが、なんででしょうかね。
05 Morning of My Life, Cliff Aungier
イギリスのフォーク/ブルース・シンガー兼ギタリストによる「イン・ザ・モーニング」。
実にさりげない歌唱で、どうということもないカヴァーだが、何とも穏やかで温もりを感じる声は、聴きこむほどに引き込まれそうになる。
本CDは、彼(2004年死去)と2003年に亡くなったモーリスとに捧げられている。
06 New York Mining Disaster 1941, Velvet Fogg
ライナー・ノウツにも「ヴァニラ・ファッジ=スタイル」とあるように、サイキデリック・ロック・ヴァージョンの「ニュー・ヨーク炭鉱の悲劇」である。
といっても、途中にギター・ソロが入るほかは、比較的短くまとめられており、恐れる(?)必要はない。こういうハードなアレンジにも負けない原曲の魅力を再確認できる。
07 Every Christian Lion-Hearted Man Will Show You, Tangerine Peel
タンジェリン・ピールというバンドも初耳だったが、ブロンディやザ・ナックでおなじみのマイク・チャップマンが在籍していたという(!)[v]。
この「エヴリ・クリスチャン・ライオンハーテッド・マン・ウィル・ショウ・ユー」は1967年9月発売という最速カヴァー(アルバムの『ビー・ジーズ・ファースト』は7月発売)のシングルだったそうだ。って、え、シングルなの?出来云々より、よく、こんな曲をシングル発売したなあ、と、そっちのほうがビックリだ。最後の後追いコーラスまで、ほぼオリジナルに忠実なカヴァーである。
08 To Love Somebody, P. P. Arnold
『キューカンバー・キャッスル』でおなじみのP・P・アーノルドによる「トゥ・ラヴ・サムバディ」のカヴァー。アーノルドといえば、「ベリ・ミー・ダウン・バイ・ザ・リヴァー」の「セット・ミー・フリ~~~~~」が耳に残っている。ありゃあ、すごかった。
本作はニーナ・シモンを始めとする素晴らしいヴァージョンが目白押しだが、このカヴァーも、ゴスペル風のバック・コーラスとの息の合った掛け合いで、シモンにも負けない魅力あるナンバーに仕上がっている。
09 Holiday, Oscar
オスカーとは、俳優も兼ねるシンガーの別名らしい[vi]。
ロバート・スティグウッドと繋がりがあって、イギリスでは「ホリデイ」がシングル・リリースされなかったので、代わりにレコーディングしたということのようだ。1967年9月発売というと、ちょうどアメリカで、ビー・ジーズのオリジナルがヒットしていた頃である。
本人の回想によると、ロビンとモーリスがIBCスタジオでのレコーディングに立ち会ったという[vii]。
肝心のカヴァーの出来はというと、切々としたヴォーカルには、なかなか味があるが、ねっとりしすぎているというか、ロビンくらい淡々としているほうが、この曲には合っているようだ。
10 Gilbert Green, Gerry Marsden
本CDで一番感動したのが、この曲だった。この後、2006年に出た『ビー・ジーズ・ファースト』[viii]のボーナス・トラックでビー・ジーズの未発表オリジナル・ヴァージョンも聞けるようになったが、最初に耳にしたのが、ジェリィ・マーズデンのこのカヴァーだった。
『ビー・ジーズ・ファースト』のどの曲にもまして1960年代を感じさせる作品で、そのキャッチーなメロディはポール・マッカートニー風でもあるが、もっとセンチメンタルでノスタルジック。エンディングの長々しいストリングスがまた抒情的な香りを添える。
ビートルズと並ぶスターだったペイスメイカーズのリーダーによるカヴァーは、バリーによると、全然思った通りではなかったというが、オリジナルのロビンのヴォーカルと比べて、どこがそんなに駄目だったのか、作曲者が描く完成形は、また違うようだ。
11 Town of Tuxley Toymaker, Billy J. Kramer
「ギルバート・グリーン」とセットになる本作[ix]は、レノン=マッカートニーの楽曲をヒットさせたことで有名なダコタズのビリー・J・クレイマーによるカヴァー。
レコーディング・セッションには、イギリスに到着したばかりのギブ兄弟とコリン・ピーターセンも加わったという[x]。
曲は、三拍子と四拍子を組み合わせたギブ兄弟の得意のパターンで、大げさなオーケストラをバックにマイナー調のメロディが耳に残る、不思議な色合いのナンバー。これもサイキデリックということか。
12 Mrs. Gillespie’s Refrigerator, Sands
この曲は、1994年のカヴァー集『メロディ・フェア』[xi]に収録されていたのを聞いたのが初めてだったが、このサンズのヴァージョンがオリジナルということになるのだろうか。現在では、ビー・ジーズによるライヴ・ヴァージョン[xii]も聞けるようになった。
いかにものサイキデリック・ポップで、これもまた60年代の匂いを強烈に感じさせる。
13 World, David Garrick and the Dandy
デイヴィッド・ギャリックは、この後「メイポール・ミューズ」でも登場するが、とくにドイツで人気を博した若手シンガーだったらしい。「ワールド」もミュンヘンでのライヴを収録したアルバムから採られている[xiii]。
ギャリックの歌声にはライヴらしい熱気があり、オリジナルよりヴァースを増やして、三回繰り返すが、歌詞がみな同じで、あまりよく覚えていなかったようだ。
バックもかなりロックっぽい演奏だが、バッキング・バンドのダンディとはアイヴィーズ(後のバッドフィンガー)の変名だという(!)[xiv]。ギャリックよりも、こちらの事実が本CDに選ばれた理由のようだ(ギャリックには失礼な話だが、もう一曲あるから、いいよね)。
14 With the Sun in My Eyes, Schadel
教会の鐘が鳴り響いて、原曲の賛美歌風のスタイルを、さらに強調した出だしだが、途中で突然ギターやホーンがワイルドに轟いてロック風になる。意表を突くというか、唖然とするというか。
シャーデルは、やはりオーストラリア出身で、ギブ兄弟同様、イギリス本国で一旗揚げようと(表現が古いなあ)やってきたシンガーらしい[xv]。
15 And the Sun Will Shine, Paul Jones
10や11と同様に、当時の大物バンド、マンフレッド・マンのリード・シンガーであるポール・ジョーンズによるカヴァー。しかもシングルA面だという(1968年)。さらにバックがすごい。本当か、と思うが、ドラムがポール・マッカートニー(!)で、ギターがジェフ・ベック(!)、ニッキー・ホプキンズまで加わっている。何の特別イヴェントかと目を、いや耳を疑うが、プロデュースがピーター・アッシャーで、彼の号令一下で集まったのだろうか[xvi]。
上記の事実に圧倒されて、内容などどうでもよくなってしまうが(すいません)、ヴァースのパートを半分に縮めて、当然のごとくというか、ロック風のラフなアレンジでライヴっぽい。
16 Words, Cliff Aungier
5に続いて、クリフ・オンジアのカヴァーが登場。「イン・ザ・モーニング」と同じく、1969年リリースのアルバムThe Lady from Baltimoreに収められていたもの(だそうです)。
とくに個性的なヴァージョンというわけではないが、ここでも飾らないヴォーカルが耳に優しい。本人の回想によると、レコーディング中に、バリーとモーリスがスタジオにやってきたという[xvii]。
17 Cowman Milk Your Cow, Adam Faith
早期のギブ兄弟の楽曲カヴァーとして比較的有名な曲。
ダラダラとした緩いサウンドと歌で、速攻ごみ箱入りの駄曲としか思っていなかったが、聞き返していると、妙な乗りの良さが後味を引くようになってきた。サイキデリック・ポップの魅力がわかるようになるには相応の修業が必要なようだ。
18 The Singer Sang His Song, Nomads
ノウマッズというのは、アイルランドのバンドらしい[xviii]。発売間際にAB面をひっくり返したといういわくつきの「シンガー・サング・ヒズ・ソング」を1970年になってシングル発売したのが、このヴァージョン。
当然(?)、オリジナル同様、ヒットはしなかったが、基本的にビー・ジーズのレコードと同じアレンジで、サビの「管楽器奏者が音を奏でる」の歌詞では、バグパイプのような音色が響く。ヴォーカルも歯切れよく、オリジナルより若々しい(ロビンがオジンくさいというわけではないが)。悪い曲ではないのだが、どうもヒットとは縁がないようだ。
19 Maypole Mews, David Garrick
「ワールド」に続いて、デイヴィッド・ギャリックによる、こちらは新作。
ギャリックはバリーの友人の一人で、彼の回想によると、ある晩、バリーの自宅で酒を飲んでいると、バリーが「君に曲を書くよ」と言いだした。ギャリックがスコッチ・ウィスキーを買いに行っている20分の間に、この「メイポール・ミューズ」を書き上げていたという[xix]。
曲は、サビがあまりぱっとしないが、ヴァースのキャッチーなメロディがバリーらしい。日本なら、さしずめ青春歌謡といった趣きで、「僕はメイポール・ミューズを歩きながら歌い始める」と、まるで三田明か舟木一夫(古いなあ)のような明るい歌声で、町中の皆が通りに出てきて踊り出すような調子の良さ。それでも、なかなかヒットはしないのが厳しい。でも、そんなことは気にもかけずに、雌鶏が卵を産むがごとく(?)曲を書き続けるバリーはさすがです。
20 The Loner, The Bloomfields
本CDで一番驚いたのが、この曲で、モーリスが義兄弟のビリー・ローリィ[xx]と書いた作品。
もともとモーリスの同名のソロ・アルバムのために1969年末から翌年にかけての時期に書かれたが、計画は頓挫し、1970年になってリチャード・ハリス主演の映画Bloomfieldのサウンドトラックに収録された。さらに1972年にブルームフィールズ名義でシングル・リリースされたのが、この「ザ・ロウナー」だという[xxi]。
際限なく音が上がっていくだけのシンプルなメロディはビー・ジーズらしいといえば、らしいが、南国リゾート風というのか、AOR風というのか、1970年代のアーバン・ポップのようでもあるし、エア・サプライのようなさわやかさで、実に爽快なポップ・チューンになっている。モーリスの最高傑作ではないかとさえ思うほどの素晴らしさで、二分足らずというのが信じられない。あっという間に終わってしまうので、そこだけが欠点だ。
21 Have You Heard the Word, The Fut
「ザ・ロウナー」で、すっかりいい気分になっていたら、またこれだよ、というヘンな曲が登場する。
1969年8月に、プロデュースしていたティン・ティン(スティーヴ・キプナーとスティーヴ・グロウヴズのデュオ)をスタジオに訪ねたモーリスが、ビリー・ローリィも交えて、酔っぱらって歌ったレコーディング・セッションをシングル化したのが、このザ・ファットらしい。ポール・マッカートニーとジョン・レノンもスタジオにいたという、わけのわからない(モーリスの証言に基づく)都市伝説まであるそうだが、そもそも曲自体が、ビートルズの「ザ・ワード」(『ラバー・ソウル』収録のレノン=マッカートニー作)のパロディという(イントロは「ワールド」みたいだが)、これ以上ない際物的作品[xxii]。
モーリスがレノンの物真似で歌う、まあ、ゲテモノだが、真顔で良いとか悪いとかいうべき曲でもないので、これ以上の感想は控えます。一つ言えるのは、モーリスは本当に芸達者ですね。
22 How Can You Mend A Broken Heart, City of Westminster String Band
本CDでは、唯一、再結集(1970年)後の作品。しかも、オーケストラによるインストルメンタルで、アルバムのオチ(というわけでもないだろうが)としては結構面白い。
要するに、ポール・モーリアかレイモン・ルフェーヴルによるカヴァーと同じようなものだが、これが意外にいいのです。
幾重にも折り重なる弦楽器の音色が豪華で、否が応でも郷愁が深まっていくアレンジが素晴らしい。風にそよぐ緑の木々、遠くにかすむ丘陵の影、まるで英国の田園風景を眼前に浮かび上がらせる絵画のようなカヴァーになっている。このインストルメンタル・ヴァージョンを聞いて改めて感じるのは、いっそヴォーカルがないほうが、この曲のメロディの美しさをダイレクトに味わえるのではないか(おいおい)。そう思いたくなるラストにふさわしい一曲である。
この後、最後に、いわゆる「シークレット・トラック」として、「ステイン・アライヴ」のカヴァー・ヴァージョンが収められている。解説がないので、詳細がわからないのだが、女性コーラスを従えたラップ調のカヴァーである。
The Bee Gees Songbook (Demon Music Group, 2004).
やはり2004年にイギリスで出たCDカヴァー集。
どうやら、イギリスにおけるギブ兄弟のヒット曲を集めたというコンセプトのようだ。残念ながら、半数以上の曲が簡単に入手できるので、あまりありがたみを感じない。
それでもタイトルを眺めていると、なかなか面白い。アンディ・ギブが、「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・ビー・ユア・エヴリシング」や「シャドウ・ダンシング」ではなくて、「アン・エヴァーラスティング・ラヴ」が収められているのは、この曲がイギリスでヒットしたからだろう。ステイプル・シンガーズやアル・グリーンのカヴァーも有名なので、いらなかったなあ、という印象。とはいえ、後半にはいくつか興味深いカヴァーも採られているので、ちょっと高いなと思いつつ、仙台駅前のCDショップで、渋々(?)買った思い出が残っている[xxiii]。
01 If I Can’t Have You, Yvonne Elliman
02 An Everlasting Love, Andy Gibb
03 Heartbreaker, Dionne Warwick
04 Emotion, Samantha Sang
05 Let Me Wake Up in Your Arms, Lulu
1993年にリリースされた『インデペンデンス(Independence)』に収録されていたバリー、ロビン、モーリスの書いた曲。おなじみモータウン路線のナンバーで、『サイズ・イズント・エヴリシング』(1993年)の頃のサウンドに強烈なリズムを合わせて、ルルのざらざらした歌声がパワフルに響く。ダイアナ・ロスの「チェイン・リアクション」(1985年)、ビー・ジーズの「シークレット・ラヴ」(1991年)などと比べるとメロディがわかりにくく、あれらほどキャッチーでもないが、サビのメロディはやはり素晴らしい。「アバヴ・アンド・ビヨンド」(『サイズ・イズント・エヴリシング』収録)に勝るとも劣らないモータウン・シリーズの決定版ではないだろうか。
そういえば「アバヴ・アンド・ビヨンド」のリード・ヴォーカルはモーリスだった。
06 Give A Hand, Take A Hand, Staple Singers
07 More Than A Woman, Tavares
08 How Can You Mend A Broken Heart, Al Green
09 Night Fever, Love Unlimited Orchestra
ここからディスコ・ダンス・ナンバーのカヴァーが続くが、最初はラヴ・アンリミテッド・オーケストラの「ナイト・フィーヴァー」。なるほどと思う選曲だが、出来のほうも、なるほど、で、予想通りのアレンジなので、なんというか、何とも言えない。軽快で楽しいとか、まあ、そんなところでしょうか。
10 Stayin’ Alive, N’Trance feat. Ricardo da Force
1995年にイギリスのチャートで2位になった大ヒット曲。オリジナルが4位だったので、ビー・ジーズより売れたということか。
90年代のサウンドにラップとサンプリングという、「ステイン・アライヴ」のカヴァーの典型ともいうべき作品だろうか。
11 You Should Be, Blockster
こちらも1999年にイギリスで3位まで上昇したビッグ・ヒット。
DJのブランドン・ブロックが変名で発表したカヴァーだそうだが、叩きつけるような激しいビートで押しまくるスタイルは90年代らしい。
12 Jive Talkin’, Rufus
13 Nights on Broadway, Tom Jones with Paul Anka
本コンピレーションの目玉というか、サプライズのひとつは、この曲。なんと、トム・ジョーンズとポール・アンカというレジェンド級大物シンガー二人によるデュエットである。
内容云々より、二人の貫禄に圧倒されて、言うべき言葉が見つかりません。それにしても、久しぶりに聞くジョーンズの声は、「ラヴ・ミー・トゥナイト」を思い出しますな。そういえば、トム・ジョーンズのアメリカでの最大のヒットである「シーズ・ア・レイディ」は、ポール・アンカの作曲だった。
14 How Deep Is Your Love, Michael Ball
「ハウ・ディープ・イズ・ユア・ラヴ」のカヴァーといえばテイク・ザットだが、権利の問題か何かで収録できなかったのだろうか。
しかし、こちらもイギリスの有名シンガーであるマイクル・ボールの歌唱なので名前では負けていない。1998年の『ザ・ムーヴィーズ(The Movies)』というアルバムに収められていたものらしいが、伝統的なソロ・シンガーらしく、オーケストラのアレンジでソフトに歌う。これ以上ないくらい甘くロマンティックな歌唱で、これはこれで正しい「ハウ・ディープ・イズ・ユア・ラヴ」といえるだろう。
15 Words, Boyzone
テイク・ザットとともに、1990年代のビー・ジーズ・カヴァー・ブームのきっかけを作ったボーイゾーンの「ワーズ」は1998年の『ガッタ・ゲット・ア・メッセージ・トゥ・ユー』にもリメイク・ヴァージョンが収められていた。
オリジナル(というのも変だが)の本ヴァージョンとどこがどう違うのか、よくわからないが、いずれにしても、はつらつと勇ましい(?)「ワーズ」で、オーケストラを存分に駆使したドラマティックで華麗なアレンジがビー・ジーズの原曲以上のヒットになった要因だろう。
16 Don’t Forget to Remember, Daniel O’Donnell
14同様に、アイルランド出身のヴェテラン・シンガーによる「想い出を胸に」のカヴァー。1987年に発売の同名アルバム(『ドント・フォゲット・トゥ・リメンバー(Don‘t Forget to Remember)』)に収録されていたものらしい。
古風ともいえるカントリー・バラードを、淡々と嫌味のない美声でさらりと歌っている。とくに個性的ともいえず、予想通りの出来で驚きもないが、うまくはまってはいる。むしろ、はまりすぎているくらいで、この曲には、やはり、こういったアレンジ以外、考えられないだろう。
17 Heart (Stop Beating in Time), Leo Sayer
最後は、レオ・セイヤーの「ハート」。すでに別のトリビュート・アルバムに収録済みだが、ついでなので一言。
なんだか入り組んだメロディで、ヒットするには難しすぎる楽曲だが、セイヤーの力強い高音と相まって聞きこむほどに味が出てくる。特に名曲とも思えないが、どこか忘れがたい作品である。
(追記)
『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』のブルー・レイ・ディスクが届いたので、視聴した。しかし、なんでHow Can You Mend A Broken Heartが『栄光の軌跡』になるのだろう。確かに、「傷心の日々」にするわけにもいかないだろうが。
昨年、映画館で見たときには、とくに目新しい情報はないな、などと、冷静に鑑賞したが、改めてBDで見直すと、長年付き合ってきたせいもあって、えも言えぬ感慨をもよおす。
最後のクレジットの画面で、「ワーズ」とともに「バタフライ」が流れていた。マーマレイドのヴァージョンは本当に素晴らしいが、やはりバリーの歌う「バタフライ」に勝るものはないようだ。(2023年6月23日)
[i] Bee Gees Songbook: The Gibb Brothers by Others (UK, 1993), no.10.
[ii] ビー・ジーズ『ノスタルジア』(Inception/Nostalgia, 1970)。日本盤は1972年発売。
[iii] デイヴィッド・ウェルズのライナー・ノウツより。
[iv] Words … A Bee Gees Songbook (Playbach Records, 2016)(『オムニバス/ワーズ:ア・ビー・ジーズ・ソングブック』、2020年)
[v] デイヴィッド・ウェルズのライナー・ノウツより。
[vi] 同上。
[vii] 同上。
[viii] Bee Gees‘ First (2006), Disc 2.
[ix] デイヴィッド・ウェルズのライナー・ノウツより。
[x] 同上。
[xi] Melody Fair (US, 1994).
[xii] The Bee Gees, Rarities 1960-1968 (Eternal Grooves, 2018).
[xiii] デイヴィッド・ウェルズのライナー・ノウツより。
[xiv] 同上。
[xv] 同上。
[xvi] 同上。
[xvii] 同上。
[xviii] 同上。
[xix] 同上。Melinda Bilyeu, Hector Cook and Andrew Môn Hughes, The Bee Gees: Tales of the Brothers Gibb (New edition, Omnibus Press, 2001), pp.259-60.
[xx] 言うまでもないが、ルルの弟。
[xxi] デイヴィッド・ウェルズのライナー・ノウツより。The Bee Gees: Tales of the Brothers Gibb, pp.279-80.
[xxii] デイヴィッド・ウェルズのライナー・ノウツより。The Bee Gees: Tales of the Brothers Gibb, pp.265-67.
[xxiii] そういえば、私がもっているCDは、ケース裏のジャケットが上下逆さまの欠陥品なのだが、みんなこうだったのだろうか?