2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

エラリイ・クイーン『緋文字』

(本書の犯人・アイディア等のほかに、『Xの悲劇』、『シャム双子の謎』のダイイング・メッセージに言及しています。) 1950年代になって、エラリイ・クイーンのミステリは、また新たな段階へと入ったようだ。40年代はライツヴィル・シリーズをメインに据え…

ニコラス・ブレイク『闇のささやき』

(本書のアイディア、真相等に触れています。) 『闇のささやき』(1954年)[i]のタイトルは、例によって、ライオネル・ジョンソンという19世紀のイギリス詩人の引用のようだが、作品ジャンルとしては、『短刀を忍ばせ微笑む者』以来のスパイ・スリラーであ…

ニコラス・ブレイク『呪われた穴』

(本書の犯人について明言はしていませんが、かなり踏み込んでいますので、ご注意ください。) 『呪われた穴』(1953年)[i]は、ニコラス・ブレイクの第十長編で、お馴染みナイジェル・ストレンジウェイズが登場する。前作の『旅人の首』から四年後で、少々…

ニコラス・ブレイク『旅人の首』

(本書の犯人を明かしています。) 「復刊アンケート第9位」。私が持っているハヤカワ・ポケット・ミステリの『旅人の首』(2003年、原書刊行1949年)には、例のあのビニール・カヴァーの下に、こう謳い文句が載った帯が付いている。ハヤカワミステリの50周…

ニコラス・ブレイク『殺しにいたるメモ』

(本書の真相を明らかにしているほか、他のブレイク長編の犯人についても、注で言及しています。) 『殺しにいたるメモ』(1947年)[i]は、ニコラス・ブレイクの第八長編ミステリだが、前作の『雪だるまの殺人』(1941年)からは六年ぶりの発表である。 自伝…