2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

横溝正史『蝶々殺人事件』

(本書の犯人、トリック等に触れています。またG・K・チェスタトンの短編小説に言及しています。) 『蝶々殺人事件』(1946-47年)は日本ミステリ史の里程標の一つに数えられるとともに、現在でもその質の高さから、パズル・ミステリの傑作に位置づけられて…

横溝正史「神楽太夫」

(本作のトリックに言及しています。) 「神楽太夫」は、横溝正史の戦後第一作として知られる。『週刊河北』からの依頼で、最初「探偵小説」を書き始めたが、枚数が超過したため、代わりに本作を書いて送った、という[i]。以上の逸話は、何度も繰り返し紹介…

エラリイ・クイーン『ニッポン樫鳥の謎(日本庭園の秘密)』

(犯人を明かしていませんが、トリック等に触れているので、未読の方はご注意ください。また、アーサー・モリスンの短編小説のトリックについても触れています。) 『ニッポン樫鳥の謎(日本庭園の秘密)』[i](1937年)は、日本の読者にとって、ひときわ思い…

エラリイ・クイーン『中途の家』

(犯人を明言してはいませんが、本書の推理やら伏線やら、しゃべり散らかしています。またディクスン・カーの1937年の長編小説のトリックに触れています。) 『中途の家』?エラリイ・クイーンになにが起こったのか。 ローマ、フランス、オランダ、・・・と…

J・D・カー『ロンドン橋が落ちる』

(犯人やトリックを明かしてはいませんが、ところどころ真相に触れています。) 『ロンドン橋が落ちる』(1962年)[i]は、前年の『引き潮の魔女』に続き、歴史ミステリとして発表された。『ビロードの悪魔』(1951年)以来、カー名義では、現代ミステリと交…

J・D・カー『バトラー弁護に立つ』

(本書のトリックその他のほか、F・W・クロフツの長編の密室トリックを明かしています。) 『バトラー弁護に立つ』(1956年)は、『疑惑の影』(1949年)以来、パトリック・バトラーが7年ぶりに登場したミステリである。といっても、バトラーが探偵を務める…