2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

J・D・カー『連続殺人事件』

(犯人等に言及しています。) 『連続殺人事件』(1941年)は、カーの自選代表作だという。創元推理文庫版の解説で、お馴染み中島河太郎が、そう書いている[i]。本当なのか、と思っていた。面白いことは面白いが、カーの作品のなかで格別優秀とは考えられな…

J・D・カー『震えない男』

(本書の犯人その他を明かしています。) 『震えない男』(1940年)[i]は、なかなかユニークな作品である。無論、ディクスン・カーには型破りの作品が多いが、本書では、二重三重のどんでん返しを試みている。それが最大の特徴である。 どんでん返しが多いの…

カーター・ディクスン『メッキの神像(仮面荘の怪事件)』

(犯人やトリックに触れています。) 1933年から1941年までの9年間の間、1936年を除き、カーは毎年3作品以上の長編ミステリを発表し続けてきた。パズル・ミステリ作家としては驚くべきペースといってよい。しかし、1942年は、1932年以来十年ぶりに、長編2冊…

ジョン・ロード/カーター・ディクスン『エレヴェーター殺人事件』

(角田喜久雄の長編、ジョン・ディクスン・カーの『読者よ、欺かるるなかれ』、『震えない男』のトリックに触れています。) 『エレヴェーター殺人事件』(1939年)[i]は、ディクスン・カーにとって唯一の共作長編ミステリである[ii]。 ディクスン・カーとい…

J・D・カー『四つの凶器』

(本書のトリック等に触れています。) 『四つの凶器』(1937年)は、五年ぶりにアンリ・バンコランを登場させた長編ミステリである。ハヤカワ・ポケット・ミステリ版で何回か復刊されてきたが、2019年に、こちらは61年ぶり(!)の新訳が創元推理文庫に収録…

カーター・ディクスン『孔雀の羽根』

(本書のトリックに触れています。) ヘンリ・メリヴェル卿のシリーズとしては、やや異色作だった『パンチとジュディ』に続いて、カーがカーター・ディクスン名義で発表した『孔雀の羽根』(1937年)は、まさに王道の不可能犯罪ミステリだった。 何十年ぶり…

カーター・ディクスン『パンチとジュディ』

(本書の内容に触れています。) 1935年の『一角獣の殺人』がカーター・ディクスン名義の最後の作品となるはずだった、という。ヘンリ・メリヴェル卿のファンなら腰を抜かしそうな話だが、カー名義の出版社からペンネームに関するクレームが来たのが、理由だ…