2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

カーター・ディクスン『一角獣の殺人』

(犯人その他に触れています。) 『一角獣の殺人』(1935年)は、ヘンリ・メリヴェル卿シリーズの第四作で、『黒』、『白』、『赤』の三部作に続く異色の長編ミステリである。 現在では、創元推理文庫から新訳[i]が刊行されて、簡単に読めるようになったが、…

カーター・ディクスン『赤後家の殺人』

(犯人やトリックを明かしてはいませんが、内容に触れています。) 『赤後家の殺人』(1935年)は、ヘンリ・メリヴェル卿シリーズの第三作で、『黒』、『白』に続くMurders in Colours(ただの造語です)三部作の最後の長編である。 現在では、創元推理文庫…

J・D・カー『盲目の理髪師』

(本書の内容に触れています。) 『盲目の理髪師』(1934年)は『剣の八』同様、1934年に刊行されたカー名義の第九長編である。 創元推理文庫で版を重ね[i]、長らく手軽に読めるカー作品として親しまれてきたが、最近新訳版も出版された[ii]。 全作品中、い…

J・D・カー『剣の八』

(本書の真相に触れています。) 『剣の八』(1934年)は『帽子収集狂事件』に次ぐ、カー名義の第八長編(だから「八」なのか?)である。 例によって、本作も日本では長い間絶版が続き、幻の長編と化していた。ところが、1993年にハヤカワ・ポケット・ミス…

J・D・カー『死者はよみがえる』

(本書のほか、G・K・チェスタトン「奇妙な足音」、A・クリスティ『大空の死』の内容に触れています。さらに、注で、同じくチェスタトンおよびA・E・W・メイスンの作品に言及しています。) 『死者はよみがえる』または『死人を起す』(1938年)[i]は、評価…

横溝正史「探偵小説」

(本作のアイディアおよびトリックのほかに、コナン・ドイル、江戸川乱歩の短編小説に注で言及しています。) 「探偵小説」は、横溝正史の敗戦後最初の小説である。『週刊河北』の注文に応じて書き始めたが、長くなったので、「神楽太夫」を代わりに書いて、…

エラリイ・クイーン『シャム双子の謎』

(本書の犯人の設定や手がかりに触れています。他に、アガサ・クリスティ、ヴァン・ダイン、クリスティアナ・ブランドの長編小説に言及しています。) エラリイ・クイーンの第七作『シャム双子の謎』(1933年)は、それまでの諸作に比して、随分風変りな作品…