2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

エラリイ・クイーン『エジプト十字架の謎』

(『エジプト十字架の謎』のほか、アガサ・クリスティ『ABC殺人事件』、G・K・チェスタトン「折れた剣」、横溝正史『真珠郎』の内容に触れています。) 『エジプト十字架の謎』(1932年)は、エラリイ・クイーンの作品中、もっとも親しまれ、読まれてきた長編…

E・クイーン『ギリシア棺の謎』

『ギリシア棺の謎』(1932年)は、エラリイ・クイーンの最高傑作とされる。 次から次へと推理を組み立てては壊していく、その様は、まさにロジック・ブレイカー、いやスクラップ・アンド・ビルドか。エラリイ・クイーン(作者および探偵)が、目を血走らせ、…

E・クイーン『Xの悲劇』

(犯人および推理内容を明かしていますので、ご注意ください。) Xと言えばY、ちょっと離れてZ、というのがエラリイ・クイーンのXYZ三部作の日本における評価だろうか。 『Zの悲劇』も(バーナビー・ロス名義だが)エラリイ・クイーンの傑作とする声は多いが…

J・D・カー『テニスコートの殺人』

『テニスコートの殺人』[i](1939年)は、『テニスコートの謎』[ii]として創元推理文庫に収録されていた長編小説の新訳版である。旧訳本は、1980年代にカーの翻訳をいくつも手掛けて、ファンを狂喜させた厚木 淳訳。新訳は、最近のカー作品の翻訳を和邇桃子…

J・D・カー『緑のカプセルの謎』

『緑のカプセルの謎』(1939年)は、ジョン・ディクスン・カーの作品中、比較的読まれてきた長編のひとつであろう。創元推理文庫で版を重ねてきて[i]、近年新訳も出た[ii]。創元社が、カーの改訳に熱を入れている恩恵を受けた格好である。 なぜ本作が版を重…