2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

エラリイ・クイーン『Yの悲劇』

『Yの悲劇』(1932年)は今読まれているのだろうか。 『Yの悲劇』といえば、本格ミステリの最高峰として知られてきた。日本では常にベスト10、ベスト100の上位を占め、あまりの根強い人気に「いつまでも『Yの悲劇』でもないだろう」、という声も多かったよう…

J・D・カー『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』

『エドマンド・ゴドフリー興殺害事件』(1936年)[i]が翻訳されたときは驚いた。2007年に創元推理文庫[ii]に収められた時には、もっと驚いた。絶対すぐに絶版になると思って、急いで書店に足を運んだ。 『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』は、ディクスン…

エラリイ・クイーンとマルクス

表題のマルクスはマルクス兄弟ではない。 エラリイ・クイーンは、パズル・ミステリ作家のなかでもひときわ異彩を放っている。彼(ら)ほど、論理に拘った推理作家は英米でもまれだろう。同時代のアガサ・クリスティやジョン・ディクスン・カーらに比しても、…

J・D・カー『死時計』

何かと言えばG・K・チェスタトンの影響が云々されるジョン・ディクスン・カーであるが、江戸川乱歩がその典型例として挙げたのが、『死者はよみがえる』(1938年)とこの『死時計』(1935年)である[i]。 カーの「チェスタトン流の味」が苦手だという二階堂…